最近忙しかったので、梅田望夫さんの 「英語で読む IT トレンド」 の最新コラム、グローブ流経営術「変化を察知する予言者を社内に見つけろ」を読むのが遅れてしまったが、この中で指摘されている、strategic inflection points というのは、今後の変化の予兆を読む上で示唆に富んでいる。新しい技術やサービスが登場したての頃は、中長期の技術・サービス発展のコンテクストの中での個々の技術・サービスのポジショニングが捉えきれず、数年たってその重大さに気づく事は多い。IT 業界に居られる方は特に、これに類する経験を持つ方が多数いらっしゃるのではないだろうか。
今はビジネス・モデルに関して多くの議論もあり、自分自身もある意味ビジネス的な試行錯誤を続けて来た 「ウェブログ」 だが、数年経つと、昨年~今年あたりが実は戦略的転換点にあたる時期だった、と思い返す事が出来る様な予感が最近は有る。
ウェブログのマーケティング上、最も難しい点は、自分がそのツールの「使い手」になって初めてメリットが強く実感される、という部分。他の方が書いたウェブログを多数読んでみたり、RSS Reader を使ってみたりということでもウェブログ・ツールの持つ可能性の輪郭を知る事は出来るが、Personal Net-Publishing Tool として常用する様になって、数ヶ月経って初めて、自分のコミュニケーション手法、表現方法がウェブログ利用によりガラっと変わってしまった事に、はっと気付かされる。ともかくまず使って頂かないと、その本当の利点を理解して頂けないケースは多い。
だが必ずしも、全ての人にそれが当てはまる、というのでも無いのかもしれない。携帯電話の様な万人向けのツールに発展するには、まだまだインターフェースの改善やサービス拡張も必要。昨年から今年は、自分にとってはウェブログによるコミュニケーション手法の strategic inflection point だったのかな、という思いは強いが、より多くのユーザーにそう感じて頂けるツールに発展するには、いくつか手を加えるべきところがある様に感じている。Trackback の打ち方ひとつでも、例えばそれを70歳近くになった両親に教える、というのは想像を絶するものがある。Usability の更なる向上は、ウェブログ・ツールの中でも使い易いとされる Six Apart 社製品にとっても、今後の課題で有り続ける。
今冬は、ISP 、ポータル各社によるウェブログ・サービスの数も増えて、ウェブログに触れる機会は、一般ユーザーに広がって行く。ウェブログは、ネットを活用するコンシューマーのコミュニケーション手法、 ネットでの購買プロセスをどの様に変えて行ける可能性があるのか、マスメディアへのチェック機能をどう果たして行き得るのか、今後とも注視して行き度い。
米国では、大企業の CIO も新しい Communication Media として注目した方が良い、と IBM の ex-VP Internet Technology の John Patrick も eWeek のインタビューで話している。ビジネス・ユーザーにも、Weblog は受け容れられて行く可能性が高い。
"I like to think of blogging as a new way to communicate. And there are many ways to think about this. Some people like to say this enables everybody to be a publisher. In fact, a lot of people said that about the Web back in 1994 and 1995—that it's a document-publishing phenomenon and that now, everybody can publish. In theory, that was true—but only if you knew HTML and if you knew how to set up a Web server and a lot of other ifs. What's new with blogging is that anybody can do it.""Say you're a CIO who wants to develop some thought leadership around the need to rethink the company's approach to mobile workforce strategies. Blogs can give you access to the grassroots and to your peers that you might not otherwise have had."
"So where does blogging fit in? It's a way to energize the expertise from the bottom—in other words, to allow people who want to share, who are good at sharing, who know who the experts are, who talk to the experts or who may, in fact, be one of those experts, to participate more fully. "
といった記述には、考えさせられる部分がある。(Gen Kanai 氏の Weblog でこの記事を知ったので、追記。)
今という時期がウェブログにとって本当に strategic inflection points だったのかどうかは、あと数年で、Dog Year のインターネットの歴史が教えてくれるのでしょう。
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ちょっと話題は変わりますが、当方もシリコンバレーと接点のある仕事が多かったので、梅田さんの CNET Japan ウェブログの他、以下のコラム、ウェブログは良く見ています。シリコンバレーで活躍される日本人の方、増加してますね。(まだまだ当方が知らない、ベイエリアのウェブログは他にも、ありそうだけど....)
MyCom PC WEB : シリコンバレー 101(山下洋一氏)
ほぼ日 : シリコンの谷は、いま。(上田ガク氏)
個人 Weblog : On Off and Beyond (渡辺千賀さん)
梅田さんや千賀さん主催の NPO : Japanese Technology Professionals Association (JTPA)
大澤さんや外村さん主催の NPO : Japan Entrepreneur Network
日本人のウェブログではありませんが、シリコンバレーの Sand Hill Road の Venture Capitalist によるウェブログも、シリコンバレーの変化を早期に知る上で参考に出来る : VentureBlog