米国の Six Apart 社に Neoteny が初の外部株主として出資を行い、正式にベンチャー企業として創業してから、早いもので1年が経過した。Corporate Weblog 中の新連載、Mena's Corner の Entry のひとつに、この1年の同社の大きな変化がまとめられている。1年の間に、Six Apart は予定通り TypePad を商用サービスとして開始した他、日本、欧州(フランス)での事業展開をスタートさせ、TypeKey という Weblog の個人認証サービスも開始を間近に控えている。現在は MovableType 3.0 のリリースに向けて最後の詰めの段階。オフィスも、San Francisco 市内の Ben & Mena の自宅から、San Francisco 国際空港に近いシリコン・バレーの San Mateo に移転した。
日本国内でも、TypePad エンジン供給先の Nifty ココログ、NTT COM/OCN ブログ人のサービスが始まり、合計約900万人の国内ユーザーの方々にも Six Apart 社製品に気軽に触れて頂ける様になった。Neoteny として Joi とともに Ben & Mena に初めて会った Palo Alto の Super Nova から数えても、まだ1年半にも満たない間の大きな変化である。急成長するベンチャー企業のダイナミズムを、Six Apart 社は体現している。立ち上げ期間を終え、更なる成長段階に入ったと言って良いだろう。
Six Apart が、短期間でこれ程成長出来た背景としては、優れた人材・商品、先見性のある事業ビジョン、そして急成長を支える外部資本の3点がタイミング良く揃った、という事が言えるかもしれない。(と言うか、Joi の個人ネットワークがその3点を繋ぎ合わせる事を加速した、と言った方が正しいかもしれない。)
優秀な人材とは、何と言ってもまずは Ben & Mena の若き20代の創業者二人である。ベンチャーの世界では、夫婦創業者ではうまく行かない、とも良く言われるが、Trott 夫妻には単なる夫婦関係を超えた真のプロフェッショナリズムがあった。Perl をベースに TypePad/MovableType の開発を行う Ben。そして Weblog のユーザー視点から、その開発に確かな方向性を与え、シンプルで美しいインターフェース・デザインに纏め上げる Mena。TypePad/MovableType のベース・コーディングは、殆どこの二人で完結している。常にユーザー視点を重視し、ユーザーの声を潜在ニーズも先取りして製品に反映して来た為に、TypePad エンジン供給先である大企業の技術担当の方々がその細部に亘る完成度に驚く程、質の高い商品に仕上がった。
そして、昨年春の Neoteny による出資。奇しくも、Google が Blogger 社を買収したのも、昨年2月の出来事だった。昨年初め頃から、米国でも Weblog ベンチャー企業各社は、それぞれ外部資本を得て、新たな成長を目指す事になった。Six Apart 社はその資金を活用し TypePad の商品としての完成度を更に高め、ネットワーク・エンジニアやセールス・マーケティング担当を雇用、米国での体制を固める。Neoteny は、Hands-on の投資家としてJoi の広範な Network をフルに活用、日経 BP 社で Weblog の発展を注視していた起業家精神溢れるSeki さんが参加し、Neoteny からは Weblog Evangelist のHirata 君、そして米国本社の取締役となった元 Apple/Infoseek の Barak が奮闘、Social Network Service ベンチャー LinkedIn 社の経営者で PayPal 上級副社長でもあった Reid が豊富な起業経験に基づくアドバイスを行って、海外市場での事業展開、商品のローカライズ体制も準備が整った。やがて100%子会社のシックス・アパート株式会社(本社東京・赤坂)が発足、Ublog 社による欧州事業も開始される事になったのである。
多忙な1年を駆け抜けた Six Apart グループは、この春から更なる成長を目指す。MovableType Ver. 3.0 は、企業環境でも導入し易い、Knowledge Sharing の為のウェブログ・ソフトウェアとして装いも新たになる。「Weblog って本当にビジネスになるの?」という外部からの問いを過去のものとする為に、Mena は Six Apart の Corporate Weblog を活用し、今後は積極的に同社の事業展開をオープンに語って行く事を Mena's Corner で宣言した。今から1年後、2005年の春にはいったいどこまで成長するのだろう。Six Apart 社の、グローバル事業展開を堅実に進める動きから、今後も眼が離せない。
尚、Six Apart の忙しい1年は、当方の MovableType, TypePad それぞれの Weblog の Business Cabin の中にいくつか Entry しているので、興味がある方はそちらも御参考頂き度い。
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当方はと言えば、Six Apart 社に対する投資家としての Hands-on 支援が一段落した事を契機に、この4月から、4年間勤務した Neoteny を離れ Venture Capitalist としてのプロフェッショナリズムを更に深く追求する事となりました。
熱心な Six Apart 社製品の1ユーザーとして、そして Neoteny 卒業生の一人として、今後とも Six Apart 社のグローバルな事業展開を、微力ながらも支援し続けて行ければ、と思って居ります。Neoteny 在勤中は、本当に多くの皆様にお世話になりました。この場を借りて、改めて御礼申し上げます。