The New York Times に掲載された、John Markoff 記者(ハッカー小説、テイクダウン、の著者としても有名ですね。)がサーチ・エンジン戦争の現状と未来を語る記事、"Google Envy Is Fomenting Search Wars" を読んでいたら、Searchblog の John Battelleの言葉として "We're entering the period of the Cambrian explosion" という一文が出て来た。インターネット上のフリー百科事典、Wiki Pedia 日本語版によると、「カンブリア爆発」とは、現在見られる多細胞生物の「門」が出揃った5億数千万年前の時期を指すとの事。多様なサーチ・エンジン種の生物が一挙に地表に現れ、激しい戦いが始まっている。
この戦いで重要なのは、John Markoff 記者も触れている通り、サーチ・エンジンそのものが高機能である事も勿論必要だが、更にどの様な付加価値の高い要素を結びつけるか、である。
Yahoo! は検索に「グローバル・コンシューマー・ブランド」という付加価値を与え、Microsoft や Apple は Desktopの OS や Browser といった「先端ソフトウェア技術」領域から切り込む。Google は、まずは戦い易い「技術」重視領域の PC Desktop で、Microsoft や Apple を相手に Google Desktop Search の発表で先陣を切り、なかなかに健闘している様に見える。本記事の最後の一節、
"If you drive by the Google buildings in the evening," said a person who has detailed knowledge of the company's business, "the lights that are still on are the ones on the floor where they are working on the browser."
という部分を読むと、Google ブランドの Browser の登場も近い様に感じられる。噂されている IM の登場も、あるのだろうか。最近米国では SMS ベースの地域情報検索サービスも開始した Google としては、上場で得た資金を活用して、Search Engine という Main Product を取り巻く Whole Product を完成させる為の得意技を、ひとつひとつ磨いて行くのだろう。そしてその複合技で、他のプレイヤーに挑戦して行く流れはさらに進み、一方で Yahoo! や Microsoft も Google が強みを持つ Search Engine のジャングルに足を踏み入れて来る。大きく育った、インテリジェントなサーチ・エンジン同士の戦いは、もう水面を出て陸上で激しく展開され始めた様相だが、まだ各地で局地戦が勃発している状況なのだろう。なぜなら、それぞれが持つ得意技は、まだ小出しにされていて、水面下に隠されている強力な必殺技がいくつかある様に思えるから、だ。
現在来日中という、Google の二人の創業者は、カンブリア爆発後、の世界をどう生き抜いて行くのだろうか。各社が多様な技(連携アプリケーション群)の開発に専心し、必殺技(メインプロダクト)との相乗効果を発揮出来る様になった時、この市場に長く名を残す強い 「種」 が決まる事になるのだろう。
かつて当方が日本市場の IT 業界のお客様に対し、Regis McKenna Inc. の Technology Marketing Consulting Service を提供していた頃には、当時 Regis McKenna 社の上級コンサルで "Crossing the Chasm" という著作で一躍有名になった Geoffrey Moore 氏の "Chasm" 理論とともに、Intel で開発されたという "Whole Product" 理論が二枚看板だったが、久しぶりにその重要性を再認識させる John Markoff の記事だった。