7月16日、3連休最終日の朝10時過ぎ、震度6強となった新潟県中越沖地震が発生、その時当方は休暇で長野県を訪れていた。滞在場所の震度は4程度で被害は無かったが、長時間に及んだ揺れと、その後のテレビニュースで映し出された震源地近くでの被害の大きさには強いショックを受けた。直前に読了していた「巨大地震の日」(集英社新書、高嶋哲夫著)で発せられていたいくつかの警告が、柏崎で現実のものになっている状況を目の当たりにしたからでもある。
以下、本書から具体的な記述を引用すると、原子力発電所の耐久性の問題に関しては、
「現在の原発設計、建設の基準とされている「発電用原子炉施設に関する耐震設計審査指針」は二○年以上前に作られたものである。その間、地震に関しても様 々なことが分かったし、原子炉建造技術も進歩している。老朽化問題も含めて、抜本的に見直す必要があることは確かである」(Page 111-112)
と指摘があり、倒壊する家屋の現状に関しても、
「日本木造住宅耐震補強事業者協同組合の調査によると、「耐震基準が強化された1981年以降の住宅でも、60%に倒壊の危険がある。震度5強以上の地震を想定した危険度評価で、「倒壊、大破壊の危険あり」は約50%。「やや危険」を含めると74%にのぼる」とある」(Page 169)
と日本国内の木造家屋倒壊の危険性を指摘し、強度補強対策の重要性を説いている。
過剰気味のマスコミ報道合戦に関しても、
「せめて各社報道合戦は自粛して、できる限り重複を避け、情報を共有しましょうということはできないのだろうか。....被災者の心情を考慮しながら、被災地の真の姿を全国に伝える方法も今後、確立していかなければならないのではないか。ただ、東京から大挙して押し掛け、遠慮会釈なく、何の展望もなく、やみくもに被災地を歩き、被害者に何の遠慮もなくマイクを向けるだけでは賛同は得られない。」(Page 85)
と、災害時、マスコミ間の情報共有を更に進める事の重要さ、日頃からの防災・減災啓蒙により重心を置く必要性を指摘している。
筆者は本書で、巨大地震が都市部で発生した場合の官公庁によるシュミレーションの不確かさについても多くの問題点を指摘しつつ、独自のシュミレーションを行い、最後には地震予知と並行した減災への取り組み強化、統合的な地震対応政府組織の立ち上げを求めている。柏崎で今起こっている災害は、時期に関する予測は難しいが近い将来、都市部でも更に大きな規模で発生し得る。テレビを漫然と眺めるだけではなく、新潟県の被災地に対して今自分で出来る事、そして将来に備えた自身の災害対策についても、きちんと考えねばならない。柏崎の状況は、マスコミの視点だけでなく、レスキューナウ x ココログで発信されている、現場情報がリアルタイムに伝わるブログの内容も参考になる。