表参道の iPhone 3G 狂想曲から1週間が経過。Apple からの圧力(!?)に屈せず、なんとか事前予約を維持してくれた某携帯電話販売店の頑張りで、16G White を並び時間ゼロ、アクティベーション時間+書類書き込み時間わずか30分で、発売日7月11日翌日の土曜夜に入手。発売当日は個人に任されたアクティベーション作業も、翌日にはショップ内で完結する様になって居り、問題無く作業も完了した。発売前から苦労して並ばれた方々には大変申し訳無く感じながらも、約1ヶ月前に予約可能店を探して奔走した甲斐あって、スムーズに入手出来てしまった。
当方も小型ゲーム機発売の際は新宿の量販店に開店2時間前から並んだり、お祭りの様に数時間並んで購入するという行動そのものは嫌いではないのだが、さすがに前日夜から並ぶというのには気が引けた。複数のメディアに採り上げられて、十分な PR 効果があったというのは理解出来る。一方で、インターネットの申し子の様な iPhone 端末の発売プロセスには、お祭り的楽しみの行列とは別のオプションとして、もう少しネットを活用した予約方法も織り交ぜる方向で考えても良かったのではないかな、とも感じた。
そして、iPhone を利用開始し1週間が経過。米国国内用初代 iPhone、そして初代 SBM InternetMachine 922SH も使っていた視点から、iPhone 3G 端末、そして AppStore サービスのレビューを行ってみる。
米国出張用に1年前に購入した iPhone 初代の OS を 2.0 に Update 済みだった事も有り、手慣れた操作で iTunes とのシンクを済ませて利用開始。初代より底面の丸みが増した筐体は、ホールドした際格段に持ち易くなった。Rを増やすだけでこんなにも手のひらへの収まり が変わる、というのは意外。しかし、変え過ぎていない、という点もポイント。底面の角度以外は、ボタンや穴の配置がほぼ初代と同じなので、初代用に 購入した、革 / シリコン製の専用ケース類が問題無く利用出来た。初代ユーザーをないがしろにしていない点には好感が持てる。3G はより小型になる、との噂もあったが、ほぼ同じサイズで安堵。初代より進化した点はステレオイヤフォンを差し込む部分のデザイン。初代では入口が狭く 3rd Party 製のイヤフォン・ジャックを差し込め無かったのだが、3G では全く問題無い。iPod としても、やっと正常進化したと言える。
一 方、最初に困ったのは、@i.softbank.jp のメール登録の説明があまり無かった事。MySoftbank 経由で希望するメールアドレスに変更してから、iPhone のメール設定機能でアカウントを追加→その他、を選んで Softbank 用のメール設定を行う事になるのだが、ある程度こういう設定に慣れているはずの当方でも、やや迷う事になった。プッシュメール、とのふれこみだったので、 てっきり緑アイコンの SMS にこのアドレスへのメールがプッシュされて来ると勘違いしたのだが、実際にはメール送信「通知」のみがプッシュされる、かつての PHS システムの様な方式だったのである。この設定には、ややとまどってしまった。実際には Gmail 等を使う機会の方が多いので大きな問題は無いのだが、購入時、店頭でメール設定に関してはより詳しい解説が必要かもしれない。
アクティ ベート後1週間利用した結果、米国での評判通り電池の持ちはやや厳しい。しかし、普通の利用方法であれば1日は持つので、実用上大きく困る事は無さそう だ、というのが結論。当方は iPhone を音声電話として利用する頻度はあまり高く無いし、iPod 音楽端末としての利用時間も一日20分程度なので、その点は割り引いて考えて頂き度いのではあるが。オフィスのデスクに居る時には USB で充電していれば良いし、いざ本当に電池切れという時の備えとしては、iPod と共用可能な外部電源装置が複数発売されている。当方は、単三アルカリ電池2本を利用し、普段は小さくたたんでおける秀逸な iPod 用伸縮型外部バッテリ(Elecom が販売)を常時携行する事にした。電池を含まぬ重量はわずかに 16g なので、これなら苦労無く持ち歩ける。iPhone を携帯電話と考えてしまうと1日というのは短く感じるが、手のひらに収まる Super-mini, Micro Mac 端末なのである、と発想を転換すると、わずか2時間程度でバッテリーダウンしてしまう Macbook Air よりずっと便利である事に気付く。事実、当方は Meeting の時に常時携行していた Air を、iPhone 購入後は A5 の紙ノート + iPhone に切り替えてしまった。この大きさと軽さでサクサクとメールも Web (Safari) も使えるのだから、薄くて軽いはずの Macbook Air さえも重い端末の様に感じられてしまうのである。SBM / Sharp の 922SH、通称インターネットマシーンを購入した際にも感じた事だが、iPhone は「1日近く電池が持ってしまう超小型コンピュータ」と位置づけるのが正しい。普通の携帯電話の電池の持ちと並列比較してはいけないのである。
利用初期は、朝フル充電、夕方6時で電池アウト、となる困ったケースもあったのだが、数日利用していると、電池の減り具合が当初より少なくなった。電池残量 ゲージ表示がおかしい(夕方迄満タンで、リセットすると半分の表示に変わった事も)のか、使いまくっていた初期と比較し利用頻度が減ったからか、その両方 が原因の様だが、いずれにせよ今では1日は平気で持つ様になった。
Yahoo! Japan のソフトバンク配下の iPhone で、Google Maps が自由に使える、というのも皮肉だがユーザーには嬉しい。左下隅の丸ボタンを押すと、現在地の地図が大きな画面上に表示される。場所によりうまく表示され る場合とそうでない場合があるのは今後の課題だが、十分実用的なアプリである。iPhone では、ホームボタンとスリープボタンの同時押しで画面キャプチャが出来るので、Google Maps 上で今いる場所を特定後、地図画面をキャプチャし、その画像ファイルをメール添付する事で、現在地の地図を手軽に送る、という裏技的使い方も容易に出来 る。
そして何と言っても今回の iPhone 新 OS の目玉は、AppStore の青 A アイコン。無料、有料の iPhone 用アプリが、端末上から自由にダウンロード&インストール出来てしまう。人気トップ25位までは、星マークのアイコンのページに無料、有料それぞれ上位アプリが表示される。25 番以内に入る事を目指す、すさまじい開発競争が世界中のソフト開発者を巻き込んで始まっているのだが、メーカー製の本格アプリも、個人が開発した様な小粋なアプリも、AppStore 内で同列に扱われている点が非常に新鮮かつフェア。自由競争の中で勝ち抜く強い DNA を持ったアプリは、今後この業界のソフト販売構造を大きく変革して行くだろう、という近未来像が容易に想像出来る。携帯端末向けソフト販売の世界的な自由化が、7月11日から始まったのである。ソフト購入に必要な動作は、価格→購入確認のボタン2タップのみ。購入済みソフトのアップデートがあった場合には、トップメニュー内の青 A アイコン上に Update 通知の通知件数が表示され、知らせてくれるという親切な購入後サポートの機能迄ある。
PhoneSaver 等の無料で iPhone のジャイロセンサーを利用したアプリも楽しいし、1200円とやや高いが「上海」は当方的には Must-buy ゲーム・アプリ。色々導入しているうちに、すぐに数千円のアプリ購入を行ってしまった。これまでの携帯電話では、利用初日に数千円もアプリに投じる、という事は無 かったので、アプリ料金も含む ARPU は、データ料金を合わせると通常の携帯電話より高くなるのでは、と思われた。Apple - SBM 間で AppStore の売上利益はどんな仕切りになっているのだろう。ただし、初期版の不具合のせいかもしれないが、一部アプリでは導入後 iPhone 自体の動きが不安定になってしまう事もあった。削除すると正常になったのだが。このあたりはまだ開発途上部分もあるのかもしれない。
音声 電話機能では、ハンズフリー機能が予想以上に優秀。これは初代をほぼ音声電話として使う機会が無かった(=米国 AT&T 契約端末なので出張時のみ利用)事も理由だが、ちょっとした電話会議では、複数人で利用する事も十分出来る仕上がり。電話をかける時に、画面上でスピー カーアイコンをタップすればそれで OK。米国生まれの端末は、このあたりの機能も充実している。
iPhone 3G で当方的に最も失望した点は、カメラ性能が初代からほぼ進化していなかった事。2百万画素も変わらず、暗い撮影場面でのノイズも多い。マクロ撮影も不得意でピンぼけ多し。撮影した画像をメールに添付する、等のプロセスはそれでも普通のカメラ付きケータイより直感的でわかり易いが、デジカメ画質アップは「これ1台だけ持って出掛けたい派」にとっては悲願。次の機種ではカメラ機能のアップグレードを強く望みたい。
以上、1週間使ってみてのレビューだ が、自分にとって一番驚きだったのは、ワンセグテレビ機能やプッシュ配信のメールの利便性、物理フルキーボードの便利さ、リモコンやステレオ対応の Bluetooth プロファイルから、併用せざるを得ないと予想していた SBM 922SH InternetMachine の利用頻度が、ほぼゼロになってしまった事。最初だから物珍しくて、という訳ではなくて、各種アプリの使い勝手が Mac-like で直感的で良いから、というのがその理由。今では完全に iPhone のみ、にメインが移りつつある。こうなったらメインとなる電話番号も iPhone に変更するかな、と思案中。
一方、922SH 等他の SBM 端末と比較しても、アンテナ感度は驚く程悪い様だ。アンテナが1本しか立っていなくてもデータ通信はちゃんと出来る事もあり、つながらなすぎて困る、とい う事ではないのだが、普通のケータイに比べてやや感度が劣る感は確かにある。922SH で受信感度がフルとなっている場所で、iPhone ではバーが1本しか立っていない、というケースも多い。ケータイではなく、MicroMacintosh なのでこの点は仕方なし、とバックアップとなる音声用携帯を常に利用しているハイエンド・スマートフォン・ユーザーならそう思えるのだが、これ一台で音 声、データの全てを使いこなしたい、という一般ユーザー向けには、そうも言っていられない事もあるだろう。アンテナ感度の弱さ克服は、iPhone 3G の今後最大の課題となるかもしれない。
とまあ、良いところ、悪いところあるのだが、総評としては非常に気に入ってしまった。モバイル環境で、たった一台の端末を持つ事が許されるなら、当方は間違いなく iPhone を外出の友に選ぶ事になるでしょう。