D700 同様、Nikon D90 も発表後すぐ、都心のショウルーム「Nikon Plaza 新宿」にデモ機が展示された。発売はまだ3週間先の9月19日(追記:悩んだ末、購入しました。レビューはこちらに。)だが、先に実機をチェック出来るというのは有り難い。デモ用マシンは3台有り、その性能を十分に確かめる事が出来た。
D300 や D700 と比較し軽く小さい筐体は、アマチュアカメラマンが常時携行する大きさとしてはこれ位の方が良いな、と再認識させるサイズ。シャッターを切ってみると D300 より静かなシャッター音で、それでいて Nikon らしい味付けも十分感じさせる。さてそして、注目の「D ムービー」動画撮影機能。一眼レフの背面液晶に、Video Recording 中を示す赤い丸が表示される、というのは、コンデジでは見慣れたマークではありながら何か不思議な興奮を覚える。新しい時代の始まりを感じさせる赤丸、なのだ。新開発の 18-105 mm レンズもコンパクトで、レンズキットとして発売されるだけあってバランスも良い。これはかなり魅力的、とショウルームを後にした。新機種購買意欲が高まったのだがその後、本機のカタログスペックを再度検証し、当方的にはひとつだけ問題が。
動画ファイルが、最近 HD カメラで採用が多い MPEG4 - H.264 / AVC ではなく、Motion JPEG / AVI ファイルなのである。これでは、最大連続撮影時間がフルサイズで5分とはいえ、かなり大きなファイルサイズになってしまう。
最大記録画素数も、Full HD デジタルビデオでは主流の 1920 x 1080 ではなく、1280 x 720 サイズ。秒間撮影コマ数も、Full HD では 30 - 60 枚 / 秒が多い中で、Nikon D90 では 24 枚/秒。録音される音声も、ステレオでなくモノラル。そもそもスチルカメラが主機能なので大きな期待をしてはいけないのかもしれないし、一般のコンパクトデジタルカメラの動画撮影機能と比較すると遜色は無いのだが、せっかく初めてデジタル一眼レフにビデオ撮影機能を内蔵するなら、多少コストが上がったとしても、もう少しスペックを上げて欲しかった。
デジイチ中級機としては軽量とはいえ、本機を携行するとデジタルビデオカメラを別途同時携行するのはややしんどい。デジイチ/HD ビデオ両方のフル機能を持つなら D90 1台携行のみで済むのだが、これだけで済ませるにはちょっとだけ、機能が足りないのである。
一眼レフの豊富なレンズ群を利用した新しいデジイチ動画映像世界を切り開いた功績は大きく、今後に期待したい。デジタルビデオ製品群を別ラインとして持つ Canon が切り込みにくい領域だけに、それを持たない Nikon には思い切りハイエンドなビデオ機能を、デジイチに融合してもらいたいのだ。
D300 を超える機能をこの筐体に収めた Nikon 技術陣の努力には拍手を送りたいし、中級スチル・デジタル・一眼レフカメラとしての魅力はそれでも十分高いのだが、Full HD 対応 H.264 / AVC エンコーダーチップを導入すると魅力が倍増するはず。今後は高付加価値上級機種の発売も、期待したい。オプションの GPS ユニット GP-1で実現される Geo-Tag 機能も、上級機種では勿論、内蔵にて。
(追記:その後、twitter 上でデジカメ・フリークな @neohawk 氏と議論の末、通常の背面固定液晶のデジイチでは、顔の前に本体+レンズ 1kg 以上を抱えて撮影するのは、1分でも腕の筋肉に厳しいだろう、という指摘。MPEG4 - H.264 / AVC ファイルで長時間撮影するには、腰の位置に抱えて撮影する為に、Sony の α 300/350 や Olympus E3 の様なフレキシブルな背面液晶機構も必要、との結論。そろそろ発売されそうな、Sony α 700 の後継機あたりに期待、でしょうか。)