最近各所から PowerShot S90 が良いらしい、という評価が聞こえて来る。当方は量販店店頭で発売直後に試用してみて、本体天板側の感触がプラスチックで重厚感が無い、レンズまわりのコントローラーリングによる操作の必要性を感じなかった事で、とりあえずは購入予定リストから外していた。しかし最近のブログや Web レビュー記事を読むと、低照明下での撮影性能が良いとの情報。常時携行カメラの RICOH CX2 は、28-300mm の高倍率ズームが売りだが、それ故にレンズは明るく無く、室内・夜間撮影では役不足気味だった。PowerShot S90 は暗所に強い広角端 F2 レンズと、ノイズ除去が得意な DIGIC4 映像エンジンを備えている。これまでは暗い場所での撮影が必要な時には常用の CX2 を F1.9レンズのGR Digital III にスイッチしていたが、S90 があればこれ1台で日常的な撮影には対応出来そう、そういう期待から採用する事にした。本日神田川沿いを高田馬場から江戸川橋まで写真散歩した際に S90 初撮りを実行。作例はこちらの flickr set にて。(スライドショーは、こちらからどうぞ。)半日利用してみた結果、操作性部分の難点から満点とは言えないが、優等生カメラである事は良くわかった。
午後の日差しが川面に反射する為、露出は結構難しいシーンが多くなるのだが、S90 の Auto (全自動)モードは光の強い部分と暗い部分の両方を天秤にかけつつ、なかなか良い仕事をしている。殆どの撮影は、Auto のままで大丈夫だった。ただ、太陽光が強すぎる場面や、夜景で一部のイルミネーションの光が強い状況では、P モードから露出を 2/3 - 1段程度マイナス補正した方が美しい発色になる様だった。
当方の使い方では、コントローラーリングでのズーム操作は必要無かったので、リングには露出補正を割り当てた。1/3 ステップずつ、実際に画面の写りを背面液晶で確認しながら露出補正出来るのでこれは具合が良い。
しかし、操作性でやや当惑したのは、背面右下にあるコントローラーホイール。4方向キーが内側に有り、外周は軽いタッチで回せるホイールなのだが、ホイールが回りすぎて選択したいモードのアイコンを通りすぎてしまったり、4方向キーを誤って押し下げてしまったり、どうも操作性がカチッとしていない。CX2 ではこうした操作は背面右上のジョイスティックの様なレバーに集約していて、操作性の観点からは CX2 の方がメニューもすっきりしていて使い易い、と感じてしまった。Canon も最近のデジイチ EOS 7D ではコントロールホイールとジョイスティックをそれぞれ独立させた、複合的なユーザーインターフェース(UI) となっている。7D の UI は非常に使い易く、操作もわかり易い。ホイールもクリック感があり、必要な設定項目できちんと止められる。コンデジでも上級機種にはジョイスティック型インターフェースを追加して欲しいものである。
もうひとつアレッと思ったのは、サーボモーターで上下するフラッシュ・モジュール。フラッシュ設定を ON にするとモーターが駆動してサッとフラッシュが現れ、OFF にすると本体に格納される。ギミックとしては面白いが、フラッシュ駆動部に使うコストは、出来れば先程指摘した、より利用頻度の高い UI 部分の改善に使って頂きたい気がした。暗所撮影に強い本機では、モーター制御する程実利用頻度は高く無い部品のはずである。格納時にグッと指で押し下げてしまって故障原因に、というのもあるのではないだろうか...と余計な心配をしてしまう。
そして本機の最大の欠点、はグリップ部。Canon は IXY Digital 等でもデザイン優先で同じ事をしがちであるが、金属製でツルツルとして居り、前指を引っかける部分が何も無い。グリップが安定しないので、これは非常に困る。GR Digital III や CX2 のグリップが非常に安定していて握り易いので、好対照となってしまう。そもそもコントローラーリング部がフロントに出っ張っている本機は、グリップ部を多少盛りつけても邪魔にはならない空間が確保されている。ここには、自前で何らかのグリップとなるものを両面テープで貼付けたい、と考えている。来週はホームセンターで手頃なものを探してみよう。
以上、物理的な UI についてはやや辛口の評価となってしまう S90 だが、Canon 技術陣への期待の裏返し、という事で。DIGIC4等、内部のソフト的処理は秀逸で、レンズや絞りの設計も本格的に出来ている。その Team Work で結実する1千万画素の静止画は、作例の通りコンデジとしては上質。
S90 は、Canon の高級コンデジ新ラインナップとしては初号機なので、次の S100 (?)あたりは、かなりブラッシュアップされて登場する事を、更に期待して待つとしましょう。