一年に一度だけ、必ずステージ写真を撮影する日がある。長女の体操発表会が毎年、地元の中野サンプラザホールで開催されるのだ。そして毎回悩むのが暗いステージ+速い体操の動きをどの様にデジタルカメラで記録するか、なのである。連続する体操の速い動きを記録するには、どうしても連写機能に優れたデジイチと、出来るだけ明るい望遠レンズが必要だ。Nikon D3S や Canon 1D Mark IV 等、ISO 12800 の高感度を常用出来るデジイチで撮影出来れば最高だが、さすがに年に一度の撮影機会に50万円近くを出費する訳にも行かない。行きつけのカメラ店でどうすべきか悩んでいると、Pentax の入門機、K-x の高感度がそれなりに使える、との情報。Pentax K-x は全くノーマークだったのだが、明るいレンズと組み合わせれば活用出来そうだと考え、本来はマクロレンズの D FA 100mm f2.8 WR レンズと組み合わせる事にした。入門機とあなどるなかれ、K-x の機能は上級機の K7 に肉薄するものだった。連写速度も K7 に劣るとは言え 4.7コマ/秒が可能で、カメラ内でのエフェクトを存分に楽しめるデジタルフィルターは K7 同様の充実ぶり。早速中野サンプラザやその周辺で撮影した作例はこちらの flickr set を御参照。(より大きな画像で見る事が出来るスライドショーは、こちらからどうぞ。)
K7 と比較レビューを行うと、シャッター音はやや重く衝撃も強めで、かつての K10D, K20D あたりに似ている。ピントは11点で合わせる事が出来るものの、光学ファインダー上では合焦点が確認出来ない(=普通なら、ピントが会った所に LED ランプが点灯するが、コストダウンの為かその表示が無い)のはやや残念な部分。しかし、当方の様に中央一点でピントを合わせるスポット測距派なら、撮影しているうちに気にならなくなる。
ISO 100 - 12800 迄設定可能という感度設定の広さが売りの本機だが、暗所でテスト撮影してみると、ノイズを気にせず撮影出来るのは ISO 1600 あたりまでの様だった。そこで、高感度の上限を ISO 1600 に設定し、舞台撮影を試みる。席位置は大きなホールの丁度真ん中あたりであったが、スポットライトが当たる舞台上であれば、f2.8 と明るいレンズのおかげでコンスタントに 1/160 - 1/250 秒程度のシャッターが切れる。これなら、子供の体操であれば動きを止める撮影が可能と一安心。
組み合わせた D FA Macro 100mm f2.8 WR レンズも、簡易防滴構造を持つ、非常にコンパクトなレンズ。発売開始は昨年のクリスマスの日と新しいレンズだ。35mm 換算、153mm の f2.8 中望遠レンズとして利用したが、スペックとしては十分なものだった。AF スピードは暗所では速くは無いが、レンズ先端部分のマニュアルフォーカス機構も利用し易く AF を MF で補完しながらの撮影が可能だった。金属筐体で冬は表面がひんやりとするが、シンプルで美しいデザインは、カラフルな K-x ボディともマッチする。
K7 等 Pentax 既存機種のユーザーであれば、各機能を迷い無く使いこなす事が可能。小型ボディの入門機にこれだけの機能性を詰め込んだ事は賞賛に値する。単三電池4本を装填する重量感は軽量化指向の方には向かないかもしれないが、電池の持ちは非常に良く(付属電池を利用しているが、連写を多用して300枚以上撮影し、デジタルフィルターによる画像処理もあれこれこなして、まだ電池表示はフルのまま)、旅行等ではむしろ充電器もいらず携行荷物が減り、電池切れになってもすぐに買えるというメリットがある。
デジタルフィルターは、K7 で気に入った水彩画の他、パステルやモノトーン、魚眼等を試してみたが、カメラ内での処理速度も高速で十分実用的。K7 と変わらぬ操作感で、クイックにデジタルエフェクトを楽しむ事が出来る。撮影1枚毎に毎回、撮影映像の色味を故意かつランダムに変えてしまうクロス・プロセス機能もユニークな機能だ。これほど機能豊富とは知らず、高感度であるという事だけで飛びついた K-x だが、中身は期待以上だった。
凝縮された、中級カメラにも劣らないマルチ機能を備えたカメラ・ボディが、標準ズームレンズ込みキットで5万円程で購入出来てしまうのだから、デジイチも本格普及期に入った、という事なのでしょう。嬉しい限り。