コンパクト・デジカメは、新しい次元の競争に突入している。それを強く感じさせてくれたのがこの、ソニー サイバーショット DSC-TX7。名刺よりひとまわり大きい縦横サイズで、奥行は Casio の Exilim Card シリーズよりは若干厚みがある程度。その中に、数多くの最新技術が凝縮されている。このサイズで、秒間60コマ、フルサイズ・ステレオ音声の AVCHD 動画を撮影出来てしまうのも驚きだが、新世代の裏面照射型 CMOS - ExmorR (エクスモアアール)と画像処理エンジン BIONZ は、静止画撮影でも驚きの新機能を提供してくれる。これまでのデジカメは銀塩アナログカメラの高精細な映像美を追いかける方向性であったが、新世代コンデジはアナログでは到底実現出来なかった数々の「映像マジック」と思える様な驚くべき新鮮な効果を、デジタル技術で与えてくれる。そしてその実現には、特殊な撮影テクニックは必要無い。誰でもシャッター一押しで映像マジシャン、になれてしまうのである。
映像マジックの一つ目は、スイングパノラマとソニーが名付けた、自分が軸となって縦横にカメラを一振りするだけでパノラマ撮影が出来てしまう機能。そして二つ目は、暗所でも高速6枚連写により、ブレの無い明るい画像を自動構成可能な手持ち夜景モード、だ。作例は、こちらの flickr セットにて。(大きめ画像のスライドショーは、こちらを御参照。)カメラ歴が比較的長い当方でもびっくりする様な映像が、小さなコンデジから瞬時に生み出される様子は感動的ですら有る。
映像マジックの一つ目は、スイングパノラマとソニーが名付けた、自分が軸となって縦横にカメラを一振りするだけでパノラマ撮影が出来てしまう機能。そして二つ目は、暗所でも高速6枚連写により、ブレの無い明るい画像を自動構成可能な手持ち夜景モード、だ。作例は、こちらの flickr セットにて。(大きめ画像のスライドショーは、こちらを御参照。)カメラ歴が比較的長い当方でもびっくりする様な映像が、小さなコンデジから瞬時に生み出される様子は感動的ですら有る。
スイングパノラマ映像は、iPhone のカメラで風景を左右に順次数枚撮影し、AutoStitch という 3rd. Party 製ソフトで一枚のパノラマ写真に仕上げていた動作を、一瞬にして完成してしまう感覚。撮影中はスライドバーが表示され、撮影開始点から終点をリアルタイムに表示してくれるので迷いが無い。風景を水平に撮影すると、出来栄えは従来のパノラマ映像とあまり変わりは無いが、狭い部屋で撮影したり、縦スイングで高層ビル内の吹き抜け空間を床から天井まで連続撮影すると、魚眼レンズとも違った不思議映像を撮影出来て面白い。応用次第で変化のある画像を撮影出来そうだ。
手持ち夜景モードでは、闇の中から明かりが消えた高層ビルを浮き立たせたり、新宿西口の何気ない夜のシーンを (Twitter のユーザーさんが指摘してくれたのだが)ブレードランナーの映画風景の様に描写してくれたりと、これまでは f1.x の明るい高性能レンズ+高感度 CMOS を備えた上級デジイチの組み合わせで無ければ撮影不可能だった場所での撮影を可能ならしめてくれる。裏面照射型 CMOS センサーの高感度と新世代画像エンジンのノイズ除去能力は、作例写真の通り予想を越えるものだった。
以上2点以外でも、Sony 技術陣の本気が伝わる TX7 の長所はまだまだたくさんある。MemoryStick Duo だけでなく SD カードも利用可能とした事、広角 25mm - 望遠 100mm 相当のカールツアイス・バリオ・テッサー・レンズを小さな筐体内に収めてしまった点、秒間10コマをメカニカルシャッターで撮影可能な高速連写、3.5 インチ92万ドットの高精細液晶、AVCHD / MP4 を選択可能なビデオ撮影機能、録音だけでなく再生もステレオスピーカーで...実売価格4万円弱のコンデジでここまで手抜き無く実現してしまった事は、高く評価したい。
当方が購入したダークブルー色も、遠目には黒、目を近づけると濃紺という凝った塗装で高品位。機能がぎゅっと凝縮されたハードウェアを所有する喜びも満たしてくれている。
欠点は少ないが、あえて挙げるならレンズ蓋となるスライドスイッチ動作がやや固目で、表面光沢加工でツルツルなので撮影開始動作がスムーズで無い事、背面タッチ液晶に撮影時不用意に触れると間違った操作につながり易い事、iPhone と比較すると写真再生時のコマ送りがややひっかかり有り、と言った程度。これまでの Sony のタッチ液晶機種よりも操作メニューはこなれていて、反応も標準的だ。(タッチ液晶操作は、iPhone に近いもの迄を期待してはいけないが。)
裏面照射型 CMOS の実力を体感出来た事で、しかし今後発売される上位機種選択への迷いも生じた。10倍ズームを備えたコンデジは、今後 TX7 の兄貴分で DSC-HX5V の発売が予定されているが、その競合としては RICOH CX2 の後継機の CX3 も準備されている。両機とも、 CMOS は裏面照射型、だ。レンズは HX5V では 25-250mmで広角に強く、CX3 は 28-300mm で望遠が長い。当初は CX2 後継の CX3 に順当にアップグレードする計画だったのだが、デジタル撮影機能がほぼ TX7 と同等の HX5V は、GPS 機能と方位磁石迄が更にプラスされ、そしてGレンズ搭載である。CMOS 性能アップは大変嬉しいが、機種選定がますます悩ましい春となりそうだ。