生まれて初めての 100% 電気で動く自動車(EV = Electric Vehicle) 試乗機会は、思いがけず訪れた。銀座で日産リーフ試乗会があるよ、とは聞いていたのだが、平日のみ、ということであきらめていたら、突然 iPhone の SMS で呼び出しが入り、ブロガーの知人が見せてくれる、と。それならば、とビルの下に降りてみると、メタリックブルーの美しく、グラマラスな車体を発見。日産の小型車、マーチやティーダのイメージは少しあるものの、ヘッドライトも大型で、リーフ向けの全く新しいデザインとの事。充電は家庭用 200V 電源で8時間、今後日産の販売店等に設置される急速充電器なら、30分で容量の 80% 迄充電出来てしまう由。電動アシスト付き自転車の充電時間に、少しだけプラスする程度なのか、とまずは驚かされる。ボンネット前部、日産ロゴ下の蓋をあけると、コンセント差し込み口が普通充電と急速充電用に二つ出現。世界市場では、前方から駐車する事が殆どなので、この様な配置になった、との説明を受けた。少し走っても OK、との事だったので、短時間、近所を走ってみることに。
スタートはプリウスの様にスイッチを入れるのだが、全く音がせず、ダッシュボードだけがオンになる。パーキングの解除は、スイッチのみ。全く機械的な荷重は無く、電気的に解除される。次に丸みのあるシフトノブを Parking から Drive モードへ入れるのだが、これも操作感が軽く、航空機のインパネのスイッチを変えているといった風情。さて、出発準備は整った。
電気自動車的異次元世界は、アクセルひと踏みで訪れた。全く音がしない様な静かさ(とはいえ、時速 30Km までは安全の為、外部では音がする仕掛けになっている模様)の中、するするっと、まるでワープ速度に突然移行したかの様にスピードが上がる。通常のトルキーなガソリンエンジンとは違って、直線的に、鋭角かつ急激に速度が上昇するので、はっと気付いてスピードメーターを見ると、「えっ、もうこの速度が出ているのか!?」と驚く次第。まさに羊の皮を被ったオオカミ。スタートダッシュはスポーツカー並みと言えるかもしれない。
ガソリン自動車的なエンジンブレーキは無い訳だが、ブレーキが良く効くので不安は無い。コーナー前の減速も、通常の運転感覚とのズレを感じさせない安定感だ。ともかく、全体に走りがキビキビしていて心地良い。
一回の充電での走行可能距離は 140km 程度ということで、テスラの 300km には及ばないが、今後急速充電スタンドを増やす事で補って行くとの事。まずは近距離で乗るクルマ、というのが、充電スタンドが限られる現在の利用シーンとなる。
しかし、限定的な走行距離を、実は常時接続の、内蔵された 3G 通信機能が補っていると聞いてまた驚いた。日産 LEAF には、グローバルデータセンターとの通信機能が常備され、それにより近郊の急速充電スタンドをマップ上に表示する事も可能との事。充電完了を、メールで知らせてくれる機能や、リモートでエアコンのオンオフを行える機能も、この通信機能により実現されているとの事。単に電気モーターで走る、というだけではなく、リーフは電脳に直結するテクノロジービークルだったのである。21世紀が、やっと自動車にもやって来た感満載、なのだ。
実質400万円程の車両価格だが、昨年度同様の補助金が適用されると、70−80万円程度の割引となり、ガソリン車と比較し月々の出費も安価な充電で抑えられる為、5−6年乗り続ければ、トータル的にはガソリン小型車を買う場合のコストに近づく仕組みである様だ。
正直、初めて乗る国産 EV が、ここまで良く出来ていると思っていなかったので、非常に驚いた。初期コストは安くは無いが、テスラ等と比較すると、我々でも手が届く価格設定となっている。電源が無いマンションの駐車場では充電は厳しいが、一軒家なら家庭用電源で一晩で満タン(満充電?)に出来るのは魅力的だ。
まだ軽自動車サイズかな、と思っていた電気自動車が、普段の生活で使えるサイズになって来た。連続走行距離が 300 - 500km になると文句無しだが、新規開発の第一号車で 140km というのは頑張っているし、Early Adopter なら購入しても近隣走行で実用的に使えるスペックに仕上がっている。
いやー、良いですね、EV。現在は自家用車を所有して居らず、そろそろ1台欲しいな、と思っていた心の琴線を、激しく揺さぶられました。日産のお店で試乗車やレンタカーがある様なので、気になる方は是非、お試しを。自動車の未来は、すぐ手の届く場所にあります。