Leica X1 は良いカメラだった(当方のブログレビューは、こちらのエントリーを御参照)。バルナック型ライカを彷彿とさせるボディ形状、そして焦点距離 36mm 相当の明るいエルマリート f2.8。高級コンデジはこれで決まり、と思っていた。
しかし突然、フジフィルムがレンジファインダーカメラの様なボディ形状の新しいアナログ・デジタルハイブリッド・ビューファインダーを備えたファインピックス X100 を登場させる、との情報。比較せずにはいられない。早速、某中野のカメラ店の、日本で一番早いかもしれない(何しろ、価格も発売時期もわからないうちに予約を受け付けてしまう)予約システムで手続き完了。CP+ の展示会での予備チェックを経て、ようやく実物が手に入った。恒例の昼夜の作例写真はこちらの flickr アルバムからどうぞ。より大きな画像のスライドショーはこちらから。全ての写真、JPEG/Fine/Standard (フィルムシュミレーション Provia)の撮って出しで、RAW はまだ使っていません。いやしかし、f2.0 の明るさを誇る、35mm 相当の単焦点フジノンレンズの実力はなかなかのもの。開放絞りでのボケにも味があります。作例からじっくり御覧下さい。
さて次は、機能面のお話。注目の光学/電子式を前面のレバーひとつで切り替えられるファインダーは実用になるのか。しばらく使ってみての感想は、「これなら実用に耐える」というもの。最初の製品なので、完璧を求める事は出来ないが、最初の製品にしては大変頑張って作られた「フジフィルム技術者のデジアナハイブリッド機への想いが伝わるファインダー」という印象。詳しい仕組みは X100 の商品説明ページを御覧頂き度いが、液晶シャッターの開け閉めで面白い様に瞬時に EVF - OVF が切り替わる。普段の撮影では液晶表示でフレームと撮影情報のみが投影された明るく見易い光学ファインダー (OVF) を利用し、マクロ撮影や、ホワイトバランス、被写界深度を確認したい撮影シーンでは電子式ファインダー (EVF) を利用、と用途別に使える所が素晴らしい。そして、EVF のクオリティも素晴らしい。144万画素だけあって、非常にクリアで美しい画像を楽しむ事が出来る。撮影画像も EVF で確認出来るので、OVF で撮影し、撮影後の再生画像は EVF に自動で切り替わって、すぐにまた OVF での撮影に戻る、という使い方が可能なのである。この手順の中では、レバーにより手動で OVF - EVF を切り替える必要すら無く、全ては全自動で行われる。
そしてこの高級コンデジの真骨頂は、堅牢なボディの細部へのこだわり。既報が多数あるので、説明を繰り返す事はしないが、ともかくも本製品は、実物に触れて頂き度い。日本の技術者達が真面目に取り組むとここまでの質感になる、という良い例であろう。
当方が本カメラで一番気に入っている点は、レンズ周囲に絞りリングが有り、シャッターダイヤルは天井部に有って、絞り値とシャッター速度をクラシックカメラ同様の操作で決定出来る点。X1 でも、独立アナログダイヤルは存在するが、絞り値は天井部で、シャッターダイヤルの隣に位置する。当方的には、絞り操作ダイヤルはレンズ周囲にある方が安心出来るので、X100 の方に食指が動いてしまう、という訳だ。
一方で頂けないのが、背面の4方向ダイヤルボタンと OK ボタン。他のアルミ製ダイヤルのデザインで力尽きてしまったのだろうか、と思わせる程(いや、背面を出来るだけフラットにしたかったのかもしれないが)、4方向ダイヤルの中心にある OK ボタンが押しにくい。多用する部分なので、近々この上に丸くて厚手のシールを貼ってしまおうかと思う程、押しにくく、どうも周囲の4方向ボタンを間違って押してしまうのだ。CP+ で確認出来たわずかな欠点だが、やはり製品版でもそれは改善されていない様だ。ほんの数ミリ OK ボタンを高くする、或は回転ダイヤルの直径を少し広げるだけでも操作し易くなるのだが。他の出来が良い分、この部分は残念である。もうひとつ挙げるとすると、左側面の MF / AF-S / AF-C 切り替えのスライドスイッチもちと小さく、押しにくい。真中の AF-S に設定しておいたはずが AF-Cモード になっていた、という事も撮影中にあった。こちらもちょっとだけ、大きくして欲しい。
しかし、これら以外では、ボディもレンズも高品質、後は価格の高さを除いては欠点は少ない。オプションの専用ケースも少々高いが、マグネットで開閉が楽な速写ケースになって居り、クラシックカメラ用ケースの様なデザインも見事だ。ケースは同時購入アイテムとして、おすすめ出来る。非常に趣味性が高いカメラでユーザーを選びそうだが、クラシックな風貌、明るい 35mm 単焦点レンズに惹かれるなら、迷わず買い、の優れた日本製ネオクラシック・カメラである。
機種変更が短期間で、滅多にカメラ用液晶保護シートを買わない当方が、本製品用に関しては保護シートを買った、という点を付け加えて置く。
(追記:その後使い込んでみたところ、OVF で現れるフレームに水平を合わせると画像が傾くという問題(EVF では問題無し)、確かに当方の機種でも見受けられます。これはソフトウェア的に直るのか、直らないのか。メーカーの対応を見極めねば。良いカメラだと思うのですが、これが直らないと厳しい。)
(追記その2:OVF 使用時に、DISP ボタンの設定から常にフレーム上で水準器を表示する設定にすると、当座は水平がずれる問題を克服出来そうだが、ノウハウ的な克服であって、実体的な問題の解決にはならない。解決には、ソフトウエア的に、OVF に現れるフレーム自体を水準器の水平に合わせて傾ける、といった処置が必要となりそうだが、OVF の見た目は悪くなる懸念も。フジの対応はどうなるだろう。)
(追記その3:X100 は、OVF-EVF 角度ずれ問題がありつつも、トータルではデジカメの新たな地平に挑んだ勇気ある機種。OVF 内のデジタルフレーム角度をユーザーが個々の視線位置にあわせて水準器を見ながら微調整出来る機能を付加すると、緩やかには問題を解決出来そうな気がします。フジの対応に期待。トータルでは良いカメラなので、対処を急ぐと吉となりそう。)