米国で先行発売されていた Canon PowerShot S100 が、遂に本日、日本市場でも発売となった。PowerShot S90, S95 と愛用して来た Canon 上級コンデジの、最新機種である。その売りは、より薄型化されたボディに新映像エンジン DIGIC5、24mm 超広角から始まる5倍ズームレンズ、そして S シリーズ初の 1.7 インチ CMOS の採用、と話題には事欠かない。歴代Sシリーズを使って来た当方からすると、前面グリップデザインの新採用は有り難い。フラットサーフェースは確かにケース等への収納性は良いのだが、撮影時の安定感は今ひとつだった。ミニマムなグリップだが、十分実用になると感じた。
Sシリーズの特徴となっている、レンズ周りのコントローラーリングの操作感覚も、カチッとした剛性の高いものになった。それ以外のパーツでも、モードダイヤルのクリック感、背面ダイヤルについても、それぞれ安心して利用出来る、好ましいものになった。現在S95 のオーナーでも、十分そのアップグレード感を味わう事が出来るだろう。
ざらついた表面のブラックにするか、つや消しチタンのシルバー色にするかは、最後の最後まで実物を見ながら迷ったが、結局シャッターボタンの銀色との整合性でシルバーを選択。ここが S95 の様に黒であれば、黒でも良かったのだが。シルバーは、アナログ時代にヒットした IXY の様な色と金属質感で、新しい S シリーズの誕生を強烈にアピールしてくれる。
初日なので、ともかくフルオートモード固定で気軽にスナップを撮影。夜道の撮影で、飲み屋の明かりに助けを得て、東京・中野の裏路地を歩きながら全て手持ちで撮影を続ける。DIGIC5 のノイズリダクションは強力で、f2.0 レンズとともに真っ暗な路地を見た目よりも明るく撮影出来るその実力は、さすが Canon とうならせる。これまでなら EOS 等デジイチの力を借りないと撮影出来なかった暗がりでも、見事に描写してくれる。これほど強力な映像エンジンをコンデジに惜しげも無く採用する Canon のおおらかな姿勢も、素晴らしい。
先日、2011年度のカメラ・オブ・ザ・イヤー上位5機種を選定したのだが、このカメラを使いながら「選考・発表時期を早まってしまったか」とつい、考え込む程であった。それほど、小型なボディにぎっちりとデジタルの旨味が凝縮された一台、なのである。一眼レフ、コンデジを各種使って来た中上級ユーザーを楽しませるだけの技術と仕掛けを、数多く内包している。
色々な焦点距離での撮影を試してみるが、S90, 95 では味わえない、24mm 広角端 f2.0 での描写が本機種の醍醐味だ。既に IXY 410F でコンデジで 24mmからの5倍ズームを使える、超広角スナップの楽しさは知って来たつもりだったが、S100 でレンズ、CMOS、映像エンジンの全てが強化され、より味わい深い画像が生み出される様になった。今後しばらく、鞄の中に常駐するカメラとしては、間違い無く S100 が居座る事になるだろう。
PowerShot S100 のサンプル画像は、こちらの flickr set から御覧頂きたい。より大きな画像で楽しめるスライドショーの場合には、こちらのリンクからどうぞ。今日は小雨がぱらついて、ややライトの光が細かい雨に当たって拡散する傾向があるので、その点は割り引いて見て頂きたいが、ズームコンデジでここまで写るのだね、という画像に仕上がっているのをおわかり頂けるはずだ。
本日は PowerShot S100 導入初日でレビューはここまでだが、今後は動画撮影や GPS 性能等、順を追ってレビューを進めてみる事にしたい。しかしここまで小型コンデジが機能進化してしまうと、マイクロフォーサーズ・サイズ程に小型化したデジイチでも、外に持ち出す機会が減少してしまう。小型化万歳ではあるが、より大型サイズのカメラを使う機会が年を追う毎に少なくなって、ちょっと寂しくもある、複雑な心境の今日この頃、なのである。