スティーブ・ジョブズ氏の伝記を、電子書籍、紙の本、日本語、英語...様々な形で読める時代になった。とりあえずはそれぞれ入手して、その Pros & Cons (長所と短所)を確かめる良い機会でもある。まずは、入手に関して。今回最も早く入手が可能となったのは、Amazon Kindle バージョンの、英語版ジョブズ伝。Amazon US Kindle Store から購入手続きを住ませると、順次ユーザーにファイルを送ってくれる。同時接続で回線混雑が生じてダウンロードに不具合が起こったりしない様に、サーバー側がトラフィックを順次捌くという、スマートな購入&ファイルデリバリーシステムとなっている。Kindle の最大のメリットは、Amazon での購入のし易さに加えて、複数端末で利用出来る点。Kindle 専用機で読むのが一番楽ではあるが、それを持っていなくても、iPad/iPhone 用 Kindle アプリで読む事が出来、しおりもネットで共有出来るので、どの端末からでも続きを読む事が出来る。わからない単語があれば、無料で配布される Oxford の英英辞典で、書籍内で意味を調べられるのも便利だ。電子ブックのトータルシステムとしてはやはり、電子書籍に早期から取り組んでいる Amazon に一日の長が有り、現状はこれが一番便利。
米国出張に行ったので、紙版のオリジナルのジョブズ伝も空港の書店で手に取って、迷った末に購入した。アメリカのハードカバー本は重くてかさばるのだが、表紙の内側の写真など、本ならではの味わいあふれる部分もあり、これは読書用というよりは、ジョブズ本だけに永久保存用として購入した。この重さと大きさでは、さすがに持ち歩く気にはなれない。しかし、表紙に色付けをして、上下に分けた日本のジョブズ伝よりも重厚感はあり、Steve のシンプルな美を求める気持ちが結実したデザインになっている。日本の Amazon からも買えるので(実は米国の空港で買うより、価格も安いと後から発見...)電子書籍で読んだ方でも、手に入れる価値はありそうだ。
英語版ジョブズ伝をしばらく iPhone + iPad の Kindle アプリで読んでいたのだが、バックライトが強い通常の液晶画面では、電子書籍の長時間読書はやはり苦しい。英語版 Kindle 端末の、目に優しい電子インクディスプレイで読む方が、読み進めるにはずっと目に良いし、疲れが少ない。
電子書籍リーダーとしては、Sony Reader の5型液晶の前機種 PRS-350 (青)を持っていて、これでも読んでみる事にしたのだが、紙版と全く同じプライスで日本語版ジョブズ伝を販売している点でまず、購入ボタンを押すまでに相当悩む事になった。ジョブズ伝は保存版だし、どうせなら日本語紙版書籍を買おうか、という気持ちと行ったり来たり。書店店頭でも書籍を眺めてみて、それでやっと電子版の購入、という時間のかかり様だった。
しかし、購入ボタンを押す勇気を振り絞って日本語電子版を購入してしまうと、電子書籍を日本語で読める喜びはひときわだ。Sony Reader も購入後読みたい本がストアに少なく、長期間放置状態となっていたが、最近やっとコンピュータ側も Mac OS 対応となり(それまでは、Windows PC 経由でなければ、WiFi もついていない前機種 Sony Reader では電子書籍を買えなかった!)、使い易くなった。タッチ液晶は前機種からの Sony Reader の利点で、液晶画面を指でなぞってページをめくる様に次のページに行ける UI はいい。WiFi で書籍購入することもこれならあるだろうか、という事で、Sony Reader の新型 PRS-T1 (黒)もジョブズ伝の下巻から導入。操作感はより軽快になり、何と言っても WiFi があればどこでも新刊本を購入出来るネット対応が良い。おまけでついている Web Browser も、Kindle 端末内蔵のブラウザより出来が良く、まあまあ使える(勿論 iPad2 等には敵わないが、非常用として)。3G 通信対応の上級機種もあるが、当方は WiFi ルーターの IDEOS もあるのでとりあえずは WiFi 対応のみの機種とした次第。
PRS-T1 は、前機種 PRS-350 と電子書籍コンテンツの共有も出来、これまでの投資も無駄にならない。6型画面なら、5型画面では画面が小さく読む気にならなかった漫画コンテンツ(Sony Reader Store では、コミックコンテンツも充実しつつある)も、読み易くなる。筐体重量は、5型の PRS-350、6型の PRS-T1 で実はあまり変らないので、それならより大きい画面でも良いだろう、という事になった。二本指タッチが出来る様になった点も、新型の特徴。Kindle を意識してか、辞書も内蔵し、読書中に意味を調べられる様になった。WiFi 接続環境下なら、Google, Wikipedia による単語検索も書籍読書中にダイレクトに出来て便利。
かくして、現状複数ある読書ツールの中では、Sony Reader PRS-T1 が一番バランスが良いということになり、これで最後迄快適に、通勤鞄に常時端末を忍ばせてジョブズ伝を読了した。さて、残る問題は電子書籍の価格体系。Amazon がその壁を破るのか、日本市場から改革者が登場するのか。早急な革新を望みたい。ユーザーはもう皆、待ちきれなくなっている。