さあ今日は休みを取って出かけるぞ、と決めていた5月1日、ゴールデンウィークの中日。しかし天気はぐずぐず。曇天で、雨が降ったり止んだり。個人的諸事情でどうせ遠くには行けないが、どこに行くとも決めずに午後3時前、西に向かう総武線に乗り込む。荻窪で美味いラーメンを食べるか、吉祥寺でヨドバシあたりを見物するか。行く先を考えながら高架から見える住宅街を眺めていてふと思いついた。そうだ、その間で降りてみよう。
学生時代、中野から吉祥寺に総武線で毎日通っていたにもかかわらず、あまり降りた事が無く、最も知らない街が西荻窪だったのだ。大学生の頃友人が居酒屋でバイトしていて、そこには数度通った、という程度。しかし、今回寄ってみよう、と決意した背景には、忘れかけていた強い動機があった。そう、以前から気になっていた、「はつね」のタンメンを食べに行こう、それを思い出したのだ。午後5時と閉店時間が早い「はつね」には、普段はなかなか行く事が出来ない。土曜日は開店しているのだが、混雑でスープ切れになると午後4時には閉店、というお店。飛び石連休の中日の平日だからこそ、行くべき場所、だったのである。
西荻窪の駅は、阿佐ヶ谷や高円寺と構造がそっくり。階段を降りて、南口に出るとしかし、他の駅とは異なる超狭空間の駅前広場が。飲食店が駅に迫っている。吉祥寺側の総武線高架下は西友のスーパーになっていたり、狭い空間をもの凄く器用に使い倒しているという印象。関東大震災の後、東京下町の人が多く移住したと言われる新宿〜三鷹間の中央・総武線沿い駅周辺には、同様に下町色が濃い傾向が見られるが、西荻窪の「建物ぎっしり度数」はかなり高い数値と思われる。
古い飲食店が軒を連ねる中、徒歩1分以内で、「はつね」がある角に到着。西荻窪の中でも年季が入った建物が多い場所だ。
午後3時過ぎで昼時間はとっくに終わっているが、はつねにはまだ待ち行列が。当方が並んだ時でも、前に6名が並んでいる。近隣は夕方から開店する Bar 等が多く、駅からすぐだがひっそりとした路地裏。地元中野の路地裏飲屋街も相当古いが、西荻はまた、「良いくたびれ具合」となっている。そう、昭和がそのまま、残っている風情なのである。
狭い店内には、小さな厨房で真面目に仕事をする店主の姿が。カウンター席は、6席のみ。6名の行列は25分ほどの待ち時間で消化され、店内へ。メニューは麺類だけ。ラーメン、ワンタンメン、タンメン、チャーシューメンとあるが、当方は迷わず、評判の高いタンメンを注文。大盛りは100円増しだが、当方は通常サイズで700円。
そして座ってからは比較的短時間で、手際の良いご主人の調理を見学しているうちにタンメンが出来上がった。シンプルだが、美しいその姿。スープはあくまで透き通って透明。通常のタンメンは白濁しているものが多いが、ここのスープは本当に透明で、スープ下の麺まではっきり見える。最近話題になった写真で、「海が透明すぎて船が浮かんでいる様にしか見えない」というものがあったが、はつねのタンメンはまさにその状態。スープが透き通りすぎて、野菜が浮き出しているかに見える。天空の城ラビュタ状態のタンメンなのだ(ややおおげさ)。そして評判通りの優しい味。シャキシャキ野菜を、癖の無いすっきりスープが包み込んでいる。麺は細麺だが、野菜が主役なので主張しすぎないシンプルさ。こってりラーメン全盛の昨今、これこそ大人のタンメン。野菜の味をじんわりと楽しめる一杯である。アア、西荻に来て良かった。美味しさに感謝をしながら店を出る。
再び駅方向に向かい、駅前の道を左に折れると、やはり1分以内で到着するのが有名な焼鳥店、「戎(えびす)」。吉祥寺の「いせや」と並ぶ、大衆焼鳥の人気店だが、これまた話ばかり聞いて訪れた事が無かった。午後4時開店ということで、開店直後でまだ空いていたので、これは、と早速入店。
午後4時過ぎから、空いている西荻窪の屋台風焼鳥屋でトリス・ハイボール。なんというゴールデンウィーク的ほのぼの感。混雑した観光地に行くより、どんだけ幸福であろう。焼鳥を注文したが、先にポテトサラダとチーズフライが出て来た。これまたシンプルだが美味いな〜。つい数分前に野菜たっぷりタンメンを完食しているが、居酒屋は別腹、なのである。
焼鳥は、正肉、ささみのネギマを塩で。そしてつくねをタレで。いまどき2本単位でしか注文出来ない焼鳥屋も多い中、戎では1本単位で大丈夫。しかもかなり安い。ほおばってみると、焼鳥の味も吉祥寺いせやより美味いのではないか、と個人的感想。これだけ飲み食いして、お代は1150円。午後4時過ぎの西荻窪飲み屋事情、素晴らしすぎます。
午後3時過ぎに飲み食いしすぎたので、腹ごなしに隣駅の吉祥寺までウォーキング。iPhone 地図で調べると、隣駅だが道順はややトリッキー。五日市街道、水道道路等の幹線道路が、総武線とは斜めに交差している為に、線路沿いに真っすぐ進める道が無いのである。
それでも途中までは、高架下が高度に発達した総武線沿いを歩く。自動車洗車・修理店まであるのにはびっくり。線路沿いの道が途切れて住宅街に入ると、古い歯科医の建物など。
五日市街道沿いを進み、再び総武線と交差したところで線路沿いの道が復活。
鶴亀マークのスーパー横の小道を吉祥寺方向へ。もう半分以上の道のりを踏破しているはず。
高架近くの、古い八百屋さん。なんだか良い雰囲気だ。今や高級住宅街となった吉祥寺周辺だが、庶民的な雰囲気も周辺部には多く残っている。
吉祥寺到着。お約束のアップルストア訪問。前より少し、とんがった品揃えが減った様で、それはちょっと心配でもある。
吉祥寺のヨドバシカメラ、2階のカメラコーナーでは、パナソニックから営業支援で来て居られる方に、本ブログの書き手であることを発見される。中野フジヤカメラ以外のカメラ店では、初めての「市中デジクマ捕獲」体験で、嬉しくもびっくり。いつも本ブログを読んで頂き、有り難うございます!(ちなみにカメラ用品を凝視(その時は m4/3 レンズ用のリアキャップを探していた)当方の視線で、digitalbear と気付かれた、との事でした。恐縮です。w)
午後3時過ぎから出かけた、西荻窪〜吉祥寺、2012年ゴールデンウィークの小さな旅の終着点は、夕闇迫る井の頭公園。こちらで Olympus OM-D の高感度性能を試して、吉祥寺いせや総本店公園前店の前を通って家路を急いだのでありました。連休で空いた都内、「普段は行かない御近所を訪ねる小さな旅」、おすすめであります。