横浜で開かれた CP+ で見て気になった新型カメラをひとつずつ体験して来たが、残すは Olympus OM-D (E-M5) と SIGMA DP1/DP2 Merrillのみ、となった。DP1/DP2 Merrill は4月末時点で未発売なので、Golden Week 休暇中は OM-D を使い倒してみる事にする。実は OM-D も、以前レビューした RICOH GXR + A16 同様、CP+ 会場で実機に触れて試してみても、当方的には自分で手に入れたい、という強い気持ちがその場ではわき起こらなかったのだが、それは m4/3 疲れというか、より大きなセンサーサイズを持つ APS-C サイズのデジカメにプラットフォーム全体を移す流れを考えていたから、かもしれない。一度は、レンズ群を含め、m4/3 関連を全て乗り換えてしまおう、と考えていたのだが、最近になって正式発売された OM-D を店頭で何度か触っているうちに、良い部分も随分見えて来た。実際に手に入れて、より深掘りをしてみよう、そういう気にさせてくれたのである。
しかし、多くの良い部分を語る前に、まずは使う人によっては「致命的」かもしれない、本機の欠点に触れざるを得ない。そう、某掲示板でも長い議論になっている、「シャー音」問題である。どうやら5軸手ぶれ補正の機構に由来する雑音の様なのだが、動画記録モードに変更した時以外、たとえ手ぶれ補正効果を切ったとしても、その音が止む事は無い。動画撮影時は音が無くなるから、音を記録しない静止画撮影時にはあってもやむなし、という向きもある様で、確かに外出時等、環境音が大きい場所では気にならないが、静かな部屋の中では正直非常に気になる音である。OM-D を購入する前に、量販店の店頭などで OM-D のスイッチをオンにして、本体に耳を当てると雑音のある場所でもその音を聞き取る事は出来るのでお試し頂き度い。追って Firmware 等で補正されると信じたいが、OM-D の「現状での最大の欠点」は、この本体の手ぶれ補正機構が発する継続的な雑音なのである。まずはこれを許せるかどうか、が OM-D オーナーになれるかどうか、の第一関門、と言えるだろう。
それさえ(?)乗り越えてしまえば、OM-D は m4/3 プラットフォーム史上、最も高度に進化したカメラと言って良いだろう。EVF の内蔵、という点では Panasonic が G1 からずっとそれを実践しているのでそれが特徴という訳では無いのだが、新機能と使い勝手が高度に融合しているカメラと感じられるのである。カメラキットで付属する、電動ズームの 12-50mm f3.5-6.3 EZ の出来もなかなかのもの。本体横のマクロスイッチを押すと、マクロレンズにも早変わり。当方好みのフルサイズ換算 24mm からの広角端が使えて、マクロも使えるというのは街角スナップ写真愛好家にはアピールが大きい点だ。街角の風景は広角レンズで。路傍の花はマクロで。自在に使い分けが可能なのである。動画を意識して電動ズーム機能があるが、当方は殆どの場合、このレンズは手動ズームで利用している。そういう使い方をしたとしても、銅鏡が m4/3 用標準ズームにしてはやや長め、という点以外では、大きな不満はあまり無い。
実際の撮影に入ると、他のレビューでも同様の記述があったが、OM-D を手にとると、ついつい EVF ばかりで撮影を継続してしまう。それほど、旧来の光学ビューファインダーカメラを備えたアナログ一眼レフに近い感覚で、撮影を行いたくなる軽快さを身につけているのである。EVF の見え方の精細さ、高速な AF、握り易いグリップ(特に、右手親指がかかる側の、右上背面独特形状のグリップ部)、追従性が良く、音質にも優れるシャッター、防水性に優れる堅牢なマグネシウムボディ...こうした要素全てが、これまでの光学ビューファインダーを備えた一眼レフの様に本機を扱いたくなる衝動に当方を走らせる。どれひとつが欠けてもそうならない気がするが、それぞれの要素の作り込みが徹底されていて、それぞれ完成度が高いのである。
EVF 主体の使い方で、背面液晶を利用するのは、撮影済みの写真をまとめて閲覧する時、そして角度に工夫をこらした写真を撮影したい時のみ。人垣の上にカメラを構えての撮影等では、角度可変のフレキシブル背面液晶は大変役立つ。以下、夜間、昼間、それぞれの作例写真をブログにまとめてみたので御覧頂きたい。OM-D の実力を良く理解頂けるはずである。
より多くの作例写真は、flickr set にまとめたので、こちらも御参考頂きたい。やや大きめサイズの写真は、こちらのスライドショーからどうぞ。