昨日午後から、3連休の中日の新宿、渋谷を歩いて、念願の DP2 Merrill でのスナップ撮影を実施。いつも通り、手持ち撮影で三脚は使わずに、何気ない街の風景を切り取って行く。前日夜、高精細・高階調で芸術的な Foveon X3 画像の数々を拝見していたので、期待感を抑えきれずに庭の花から撮影開始。何気ない庭先の光景でも、Foveon の眼を通して眺めると肉眼では気付かなかった様々な発見があり「後で写真を等倍で見て」非常に驚く。
小さな黄色い花を撮影しただけ、のつもりだったのだが、等倍に拡大して眺めてみると、花の間に小さな蟻のおしりと後ろ足を発見してしまったのだ。あまりに細部までしっかり写り込むので、こういう発見が後から訪れる。(等倍に拡大した flickr 画像はこちらで)
こちらのピンクの花の下、葉先にも、よくよく見てみると子供のバッタが二匹。注意深く見ていれば撮影時にも気付くのかもしれないが、Foveonは地球上で視界に入る、小さな生命でもその営みを逃さない。(等倍に拡大した画像はこちらでどうぞ)
人間も、地球全体から見れば非常に小さな存在。新宿や渋谷の雑踏に紛れてしまうと、もう誰が誰だかわからない。当方が時々利用する定点撮影スポットのひとつ、JR 改札から井の頭線に向かう渋谷駅内のコンコース。そちから見下ろせる渋谷のスクランブル交差点はこれまで「雑踏を集団と見て撮影する」街角スポットに過ぎなかった。3千万画素を越える中判デジタルカメラならともかく、普通のデジカメでは、群衆はひと塊の撮影対象とするしかない。しかし DP2 Merrill の Foveon X3 撮像素子は、人間の網膜能力を越えるほどの撮影性能で、渋谷交差点の雑踏を「ウォーリーを探せ」の如き詳細な描写に変えてしまうのである。あまり透明度が優れない、細かい網格子すら入ったガラス越しの撮影でこんな映像が撮影出来るとは思いもよらず、非常に驚いた。このカメラは今迄のデジカメの常識を全く変えてしまうものだと実感した一枚である。
マークシティに上がって見下ろすと、岡本太郎画伯の壁画前の光景もその空気感を含めて、時を止める事が出来てしまう。DP2 Merrill の高精細・高諧調の描写能力は、目の前に広がるシーンを立体的に捉え、その場の空気の色まで含めて、後でその写真を見るものに正確に伝えてくれるのである。こちらも、等倍画像で御覧頂きたい。
Foveon X3 は、夜間撮影でもその性能を落とさない。当方が新カメラのテスト撮影で好んで利用している新宿小田急からビックカメラ西口店に渡る歩道からの夜景も、こんな具合に撮影可能だ。等倍に拡大の上、チケットショップ前の看板の文字や、マクドナルド店内の光景も見て頂き度い。あますところなくその光景を記録している事が良く理解出来るはずだ。以下、作例を続けるが、写真の下に、等倍 flickr 画像へのリンクを置く事にする。Foveon X3 の 4704 x 3136 画素の超高精細画像世界をお楽しみ頂ければ、と。
新宿西口陸橋定点撮影、昼間の場合の等倍画像。上記の夜間撮影結果とも、比べて頂きたい。遠くのビルの看板文字までくっきり。
レンガ色のビル外装までしっかり見える等倍画像は、こちらからどうぞ。
富士重工の新型エンジンの等倍画像。金属により異なる質感が表現されている。
新宿西口駅前定点撮影の等倍画像。遠く、ヨドバシカメラあたりまで、各種看板の文字がしっかり読める。f3.5 と開放からそれほど絞らず、これほど鮮明に写るレンズ性能も素晴らしい。
新装工事が7月1日に完成、オープンした中野駅北口駅前広場の等倍画像。中央線快速東京行き、の行き先表示もくっきりと。
ビル壁面にひろがるツタの等倍画像。普通に撮影すると、背景の空が明るいので暗く沈み込んでしまう場合も多いが、Sigma Photo Pro (SPP) RAW 現像後処理で、葉先の光の当たり具合迄鮮やかに表現。
我家の愛ウサギ、拡大等倍写真。よくよく見ると、眼の周囲にまつげの様に長い毛が。毛を一本単位で細かく描写する Foveon X3。
居酒屋前に並べられた、夜のトマトの等倍写真。夜間に赤を表現するのも難しいのだが、赤の諧調まで細かく描き出す Foveon 恐るべし。ザルの質感にも注目。ちなみに ISO 800 開放 f2.8 、1/50 秒の手持ち撮影。手ぶれ補正が無い硬派カメラの DP2 Merrill。
最後の1枚は、ネオンと木質外装が特徴の、中野の老舗バー HARAH'S の等倍画像。ネオン窓の下に置いてある、ウィスキーのミニボトルまで、夜間撮影でもしっかり記録。
上記以外の DP2 Merrill 作例画像は、こちらの flickr set で御覧下さい。JPEG + RAW で撮影、一枚目に JPEG 画像、二枚目に RAW 画像を SPP で現像し JPEG 変換した画像を置いていますので、DP2 撮って出し JPEG 画像の品質(実はこれもなかなかのもの)をスライドショーで確かめる上でも便利かと。
以上の撮影ウォークを経て、DP2 の数十万円〜数百万円以上の価格帯の「まるで中判デジカメの様な」画質には驚かされるばかり。これがポケットに入るサイズなのだから、コンデジとしては高い様に思えても、実はバーゲン価格なのだと言えましょう。近距離 AF の合焦時間、1日100枚以上撮影するなら最低2本は必要となる電池消費、ほんのり暖かくなるボディなど課題はあるものの、スイッチオンからの起動はこれまでの DP シリーズよりずっと高速で(レンズを繰り出さない影響も大きいのでしょう)、超高画質スナップカメラとして活躍範囲は広そうです。
問題は、SPP での RAW ファイル現像に、今利用している Mac mini 8GB RAM では1枚あたり30秒程を要してしまう事。高精細画像を確認し易い Retina Display の新 Macbook Pro が欲しくなってしまう、そういう副作用も高いカメラでもありますのでご用心。(笑)