SIGMA DP1/DP2 Merrill でより高精細なデジタルカメラ画像に慣れ親しむうちに、上級デジタル一眼レフの、「フルサイズの解像度はどれほどのものなのであろう」という疑問と興味がふつふつと湧く様になった。重く大きなデジイチは、何度か購入しながら結局持ち歩く機会が減り売却処分、という流れが続いていたので抵抗感があったのだが、この秋から冬にかけて、少し軽量なフルサイズデジイチの Nikon D600、Canon EOS 6D の発売がアナウンスされた。これなら重く大きいカメラを苦手とする当方としても、遂にフルサイズの世界へ行けるかな、と詳細検討を開始。レンズ交換式デジイチは本体もレンズも一旦全て処分していたので、Nikon / Canon どちらにでも行ける状態だったのだがいくつかの要因から Nikon D600 を選択する事にした。選択基準は、シンプル。両方とも新しい時代を作る素晴らしいカメラだと思うのだが、ちょっとした理由から D600 に。その理由は以下。
まずは、光学ファインダーの視野率。Canon は少し造り込めば出来るはずなのだが、恐らく上級機との差別化をするために、97% としたのだが、Nikon は素直に 100%を奢って来た。EVF で 100% 視野率に慣れてしまうと、光学ファインダー (OVF) でもやはり 100% は欲しくなる。まずこれが一点。もうひとつは、記録媒体対応。両方とも SD カードが対応メモリーとなり、当方としては大歓迎なのだが、D600 は2スロット内蔵、6D は1スロットのみ。Nikon の場合は、バックアップを作成したり、RAW/JPEG をカードを分けて記録させる事等も出来る。この点でも D600 が魅力的に映った。そして最後、これはマイナー要因なのだが、内蔵フラッシュの有無。高感度撮影に強くなった D600/6D クラスになると内蔵は必要無い、という意見も多いと思うのだが、ちょっとした時に急にフラッシュの光が欲しくなる事がある。それに即対応出来る存在として、内蔵フラッシュは便利なのである。以上3点から、Canon EOS 6D 登場を待たずに、Nikon D600 を手に入れる事とした。
(追記:4点目の選択理由で、重要なものを忘れていた。電源ボタンの位置はメーカー、カメラにより様々だが、スナップ撮影で不意に出会った被写体を撮影したい街中散策写真家の場合、D600 の様にシャッター周りに配置された電源ボタンは大変便利。当方はストラップを使わず、グリップバンドをカメラに装着して常にグリップを握りつつカメラを右片手に持っている事が多いのだが、電源がこの位置にあると、人差し指をクイッと動かすだけで一瞬でカメラ電源オンに出来る(しかも D600 は起動が超高速)、という訳である。)
EOS 6D も、WiFi 内蔵というポイントには強く引かれたのだが、Nikon D600 でもオプションの WU-1b という小さなユニットをボディの USB 端子に差し込むと WiFi 経由でスマートホン接続対応(iOS/Android の両方に対応)出来るとわかって、それならD600 で、という流れに。EOS 6D は更に GPS も内蔵するのだが、カメラ内蔵 GPS はこれまで実用的である事が経験上少なかったので、今回の選択では重要な要素とはならなかった。WU-1b でスマホと WiFi 経由無線接続すると、画像転送以外に、スマホから D600 のライブビュー画面をリモートで見て、AF をあわせシャッターを切る、という事も可能になる。実際に試してみて、なかなか面白い機能なのだが、これまでいくつか試したカメラ内蔵 WiFi のケースと同様、接続が安定しない。ブツブツと接続が切れて再接続/再送信を余儀なくされる場面が多かった。カメラ無線接続をサクサクと行える様になる迄は、まだ道半ばと感じられる。WiFi ユニットが小さくてアンテナ感度が弱いから、なのだろうか。原因を知りたい。
レンズは2月に新型となった 85mm f1.8G、旧型の 35mm f2 の明るい単焦点レンズ二本を入手。意外に古いレンズの AF 速度が速い、という事実がカメラ店店頭で複数本の NIKKOR レンズを試してわかったので、1本は超音波駆動ではない旧レンズとしてみた。この AF スピード比較結果は当方としても予測していなかったのだが。そしてまずは、横浜の夜景撮影にトライ。フルサイズ画素の余裕と高感度対応画像処理エンジンから、三脚でなく橋の欄干に置いて撮影するだけでも、それなりの仕上がりとなる。
久しぶりに Joi が来日した NCC カンファレンスの写真も撮影したが、85mm f1.8G のレンズの明るさもあって、暗いカンファレンス会場の撮影でも苦にならない。
85mm f1.8G と開放が明るいポートレートレンズなので、前後をぼかす映像効果は思いのまま。とりあえず、エクトルの横顔にピントを合わせてみたところ。(彼は "A Geek in Japan" の著者で、スペイン語圏に日本のおたく文化を伝える著名ブロガー)
置かれた位置がわずかに前後する Macbook 上蓋も、ピント位置次第で主題を変える事が可能に。
気軽に中野サンモールの街角スナップを撮影したり。
台風の雨が近づく新宿御苑の空気感を見事に写しとってみたり。
写真の左半分には、葉の間から漏れる光が、良いボケ味となって再現されている。
少し暗い木陰に咲いた、真っ赤なヒガンバナ。その向こうに、差し込む陽光。露出設定が難しい場面だが、D600 の優秀な自動露出コントロールで、微妙な光線状態でも安心。
そして、肝心のフルサイズらしい解像度。こちらに掲載した写真は全て、RAW ではなく JPEG 撮って出し、なのだが、それでもさすがフルサイズデジイチ、詳細な解像を実現している。この写真をオリジナルサイズに拡大し眺めると、右上の緑の犬の看板、その左上に、小さなカラスが写っている事を確認出来る。これがフルサイズの力、である。
これまで重く、持ち運びが大変だったフルサイズ対応デジタルカメラ。今後はより小型の(しかしレンズ交換は出来ない)Sony RX1 や、Leica M 等、さらに多くのラインナップが登場し、活況となるジャンルである。
軽くなったとはいえ、レンズ込みで楽々と 1kg を越える総重量となる D600 は、気軽に常時持ち運べるカメラでは無いので、気合いを入れる失敗の出来ない撮影時や、スポーツ撮影、暗い屋内での撮影には活躍してくれる事だろう。しかし、それ以外のシーンでは、DP1 Merrill の活躍時間が多くなりそうではある。それぞれのオリジナル画像を何度も拡大してみて、小型ながら Foveon 素子の解像度における優秀さが再確認出来た。その意味でも、フルサイズを実際に使ってみて良かった、と考えている。性格が全く異なるそれぞれのカメラなので、同じレベルで比較してはいけないのだが、当方にとっての「メインカメラ」は、やはり SIGMA DP1 Merrill、という事を再確認させてくれる、そんな Nikon D600 フルサイズデジイチなのでありました。
AF-S Nikkor 85mm f1.8G レンズ と Nikon D600 の作例写真は、こちらからどうぞ。
AF Nikkor 35mm f2 レンズと Nikon D600 の作例写真は、こちらにあります。