2月22日、中望遠 50mm (35mm カメラ換算 75mm 相当)f2.8 固定単焦点レンズを装備したハイエンド・コンデジの SIGMA DP3 Merrill が発売予定となっている。当ブログ B-log Cabin TP を通じ、最新デジカメ勝手評価記事執筆を続けて来た甲斐あって(!?)、発売前 Beta 機を SIGMA 社から短期間ながらお借りするチャンスに恵まれた。標準レンズの DP2 Merrill (当ブログのレビューエントリはこちらで)広角レンズの DP1 Merrill(同じくエントリはこちらで)と使って、超小型サイズながらフルサイズ一眼レフカメラに匹敵する高精細画像撮影が楽しめる DP シリーズに魅了され続けて来たが、DP3 Merrill なる最新カメラは、どの様な特徴を持っているのか。短い試用期間だが作例も多数撮影したのでそれを御紹介しつつ、ファースト・レビュー・インプレッションを以下にまとめてみる。写真は、先週パシフィコ横浜で開催されたカメラ製品展示会、CP+ 2013 SIGMA ブースで展示されていた DP3 Merrill。
まずは明るい屋外の撮影から。SIGMA独自の CMOS、Foveon X3 の超高精細な眼は、何気ない風景の Detail を極限まで伝えてくれる。75mm 相当の中望遠レンズは細部まで余す事無く記録。写真は中野サンプラザホール前だが、フルサイズに拡大すると DP1 / DP2 同様、その描写能力には脱帽である。
こちらの写真もフルサイズ拡大で見て頂きたいが、JR 駅の何気ない一瞬が克明に再現されている。75mm の中望遠レンズは、風景の一部を「気負い無く切り取る」感覚で撮影出来る。
DP3 Merrill には、インターバルタイマーという一定時間毎に自動撮影を行う機能も追加されているので、三脚を備えて同じ場所で撮影すると、色々発見もありそうだ。機会があったら試してみたい。写真は東京駅駅舎前。フルサイズ拡大はこちらからどうぞ。
75mm 中望遠レンズの DP3 Merrill を最も活用出来る被写体はやはり、ポートレート。まずは KFC のカーネルサンダース像の横顔。背景ボケも良い塩梅だ。
夜の街のポートレート撮影。暗いシーンは得意ではないと言われる Foveon だが、ブレに気をつけて撮影出来れば、人物が背景のネオンに浮かび上がる。
パシフィコ横浜から、横浜駅へ歩く途上、夕暮れの街。遠く日産ビルロゴのネオンも、闇に浮かび上がる。これは三脚無しの手持ち撮影だが、Shio 先生の CP+ SIGMA ブースでの講演で、「ネックストラップをカメラを持つ腕を前方に伸ばす事で首の後ろに固定すれば、ブレが無くなる」、という撮影ノウハウを早速実行したもの。アドバイス通りの効果有り。フルサイズ拡大画像も是非こちらで御覧頂き度い。
横浜の暗い運河に架かる橋の上から、商業ビルの夜景撮影。かなり暗い場所だが、橋の欄干にカメラを置いて撮影。暗いシーンが得意では無いといっても、工夫次第で夜景撮影も楽しめる。フルサイズ画像は、こちらから。
DP3 Merrill のポートレート撮影に次ぐ得意分野は、マクロ撮影。最短 22.6 cm 迄寄る事が出来、1:3 倍率までの撮影が可能となっている。Foveon X3 の眼でのマクロ撮影は、新しい異次元世界。ガラス素材でも、金属素材でも、そして Steve Jobs の 1/6 サイズ人形 (Legend Toys 製)でも。詳細に迫る事が出来る。レンズ周囲のフォーカスリングも、これまでの DP シリーズの中で最も回し易く幅があるもので、マクロ撮影の細かい焦点合わせに向いている。作例は以下を御覧頂き度い。
背景が空で、やや逆光気味の花弁の撮影。露出補正をプラスに振って、美しい花を浮き上がらせる。AF (オートフォーカス)が不得意とする、白バック、白被写体なので、MF (マニュアルフォーカス)で花弁にピントを微調整。92万画素の液晶は、ピントも掴み易い。
井の頭公園の池で、カモと水面。カモが泳ぐと水面下の動きで複雑な波紋が生じるのだが、それを DP3 は見事に捉えている。
井の頭公園池で、噴水を背景として、シルエットのカモを前景に。夕暮れ時の複雑な光の記録も、DP3 が得意とするところ。幻想的な写真に仕上がっている。
CP+ 2013 のシグマブースは、中に入ってしまえば白基調で明るい場所なのだが、パシフィコ横浜展示会場全体の照明は暗め。f2.8 の明るさを持つ DP3 Merrill の固定単焦点レンズは、光が弱めの会場内でも活躍、ISO 800 程度迄なら実用的な写真を撮影する事が可能となった。
最後にポートレートを、という事で、CP+ シグマブース内の美しい説明員の皆様にモデルをお願いした。大きな一眼レフで撮影されると撮影される側でも身構えてしまうものだが、コンパクトな DP シリーズには相手をリラックスさせる効果もある様で、自然な表情での撮影が可能となった。
あえて SIGMA ロゴを指差してもらい、"One more SIGMA (= DP3 Merrill) " 的ショットを演出。背景ロゴのボケ具合も良い感じである。
以上の作例で見て頂いた通り、「中望遠固定単焦点レンズを備えたコンパクトデジタル」という新ジャンル・カメラ DP3 Merrill の活用範囲は、当初の想像よりずっと広いものだった。標準レンズを備えた DP2 Merrill、広角レンズの DP1 Merrill の2台があればそれで十分ではないか、と思っていたが、DP3 Merrill は補完的機能を備えた魅力的な兄弟カメラと、実際に数日利用して良く理解出来た。
RAW 現像に利用する SIGMA Photo Pro Ver. 5.5 も Beta 版を利用させて頂いたが、話題の白黒現像、モノクローム・モードも加わって、それでいて全体的な操作感はこれまでのバージョンの SPP の使い易さが踏襲されて居り、良く出来ている。次のレビュー・エントリーでは、DP3 による RAW 白黒撮影、現像についても掘り下げてみたい。
既に SIGMA SD/DP シリーズユーザーであれば、最大3万円のキャッシュバックが得られるスペシャル・プログラムも、2月22日の発売日から6月初旬まで展開される様なので、SIGMA 愛好家が本機を手に入れ易い環境が整えられている。高機能・高品質というだけでも惹かれるこのカメラに、キャッシュバック迄組み合わせられているとなると、背中を強く押されてしまう。発売が待ち遠しい。
尚、今回撮影したカラー写真は、こちらの flickr set にまとめているので、御覧頂ければ、と。やや大きめ写真のスライドショーは、こちらからどうぞ。(尚、今回お借りしたものは Beta 機ですので、DP3 Merrill 量産モデル+正式版 SPP Ver. 5.5 による現像結果は作例とは変わる可能性がありますので、お含み置き下さい。)
ブラブラ写真家 Sasurau 師匠による、シグマカメラによるお散歩写真コラム、「シグブラ」も次回あたりは DP3 でしょうか。